(2015.8.20発信)
○無肥料
タイトルに無肥料栽培と付けましたが、私たちは肥料を使わないことを前提としているわけではありません。肥料がなくても作物は育つという意味で、そのような圃場整備をしていくことを目指しています。
肥料がなくても作物が育つ環境とは、土中において陰と陽の両方が存在する環境です。両方がそろう時、新たな生命が誕生します。
○土中の陰陽
では、土中における陰と陽のエネルギーの正体は何でしょう。
陰のエネルギーとは、物質(有機物)が微生物の力によって、「有(物質)」から「無(エネルギー)」へと転じた状態です。この状態は還元力がとても高い状態でもあり、土中はマイナスイオンで満たされています(作物の吸収力を助ける)。
その為には土中を多様な微生物で満たす必要があり、「乳酸菌栽培」等によってサポートしていきます。そして微生物にはエサが必要です。しっかりと草を育て刈りこんでいくことで、エサを供給していきます。
陽のエネルギーは酸素です。そして土中が酸素で満たされるためには、土が多孔質になっている必要があります。樹園地や野菜畑においては、2章で述べた天地返しの方法で土を多孔質に変えていくことができます。
その方法は土中の硬板層を破壊する方法でもありましたが、田んぼの場合、保水能力を維持しなければならないので、不透水層の存在は不可欠です。
○田の土づくり
田の土づくりは、お米を収穫した直後から始まります。
収穫した時に出るワラをすき込む形で、田に畝(うね)を立ててゆきます。この時、納豆菌(放線菌)もあわせて散布します。
これは、温かいうちに有機物の分解を促すためです。そして草の種の発芽も促します。そのことで、翌年の雑草の発芽をおさえることができます。
また、畝を立てることで酸素を十分土中に取り込むとともに、表面が凹凸になっているので、電子の活動が活発となり、還元力を高めます。
最初の畝を11月に立てたとして、年内にもう一度、畝のたて替え(凹凸逆に)を行います。そして1月か2月にもう一度元の畝に戻します。
すなわち、田の土つくりは、お米の収穫直後から田植えまでの期間に行い、畝の切り替えによって陰陽のエネルギーをしっかりと土中に取り込みます。
ちなみに、微生物によって分解が進むとマイナスイオンで満たされますが、そこに酸素を取り込むことは、プラス(陽)のエネルギーを取り込むことでもあります。そして「-(マイナス)」と「+(プラス)」が合わさると「土」となります。土こそが、陰陽合一の象徴です。
○田と草
無肥料というテーマからは外れますが、上記の方法で田の土づくりを進めると、田の草が生えにくくなります。
土づくりのあと、平らにして水を張ります。できる限り平らにすることが重要で、水田の環境を均一に保ちます。それでも草の種は発芽しますが、均一なので、まばらに発芽します。納豆菌が土中にたっぷり存在しているので、菌の攻撃で草が発芽しても弱くなります。そして弱い草は、タニシなどの攻撃を受けて除草されます。
これが均一でないと、一気に発芽するリスクが高まり、生き残る草が増えてきます。いったん生き残るとその草は強くなり、菌やタニシの攻撃を跳ね返します。
○もみ殻堆肥
最初に無肥料と書きましたが、自然の循環が保たれている圃場においては、肥料なしで作物が出来るという事で、転換中の畑など、まだ土づくりが不完全な畑においては、土からのエネルギーの供給が不足します。
その場合、肥料によって補ってあげることは重要ですが、不足している分だけ供給するというのは至難の業です。そして大量に投入された肥料は土づくりの足を引っ張ります。
なので私たちは自然に近い肥料を手作りし、必要に応じてその肥料を畑に投入します。
その肥料は、もみ殻と米ぬか、そして生ごみと水で作ります。
もみ殻はまず水でしっかりと湿っている状態にし、もみ殻にしっかりと米ぬかが付着する程度の米ぬかを加えます。生ごみはあるだけ加え、なければ加えなくても構いません。良く混ぜた後、できる限り高く積み上げてビニールで覆います。高く積み上げるところがポイントで、電子は高いところに登る性質があるので、積み上げれば積み上げるほど、発酵が活性化します。この時、乳酸菌溶液も一緒に投入しておくと、発酵はスムーズとなり、水の代わりに海水を用いるとさらに発酵が進みます。
その後、5日に1回程度の割合で切り返しを行い、乾燥してきたら必要に応じて水分を加えます。
これを4回繰り返すと、約1か月という短さで上質の堆肥が完成します。
それ以降は、例えば生ごみが溜まってきたら、堆肥の半分を畑に投入し、残った堆肥とフレッシュなもみ殻と米ぬか、そして生ごみを加えてよく混ぜて積み上げます。それ以降は、1~2回切り返すだけで、生ごみの姿は消えて、上質の堆肥となります。
ここでも大切なことは、畑が今何を望んでいるのか、その声を自分が聞き取ろうと耳を澄ますことです。ご飯が欲しいと訴えていたら、「無肥料」にこだわらずにご飯を上げてください。しかし、それをした後の観察もしっかりと続けて、その結果を受け入れることが大切です。
自分の信念に縛られて、あるいは失敗を恐れて「何もしない」ことが最大の失敗です。
(「無肥料栽培」、終わり)
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むすび通信1~100号のURLです。
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