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農哲副読本 農から学ぶ「私」の見つけ方(10)

5.事例で考える

 

 

ここまで自分を変える方法を述べてきましたが、全体的に抽象的な表現が多く、ピンと来ないかもしれません。事例を紹介しながら復習してみましょう。

 

○自然農での失敗

私たちが実践する自然農の注目が高まり、多くの若者が自然農の世界に飛び込んできてくれるようになってきました。それはとてもうれしいことですが、その一方で多くの若者が挫折も味わっています。自然農を学んだりサポートしてくれる環境も整ってきました。ですから始めるときのハードルは低くなってきています。

しかし、始めた時はうまくいったのに、徐々に厳しい現実が現れてきます。うまく作物が出来なくなった・一向に収量が増えていかない・病気や害虫で作物が全滅してしまった など様々な試練がやってきます。

最初に教わった通りに実践しているのにどうしてうまくいかなくなるのか。いったいどうしてよいのか途方に暮れます。

自然農に取り組んでいる人たちと話をすると、「○○してはいけない」という話をよく耳にします。肥料を入れてはいけない・耕してはいけない などです。しかし、そのようなタブーを設けていくことが自然農なのでしょうか。自然農はマニュアルで行うものでしょうか。

世の中に伝わる自然農法は「誰か」の成功事例でしかありません。しかし畑の環境は多種多様です。教わった通りに実践することは、誰かの人生をなどっているだけです。自分は自分の人生を歩まなければなりません。そのためには、あなた自身が畑と向き合い、作物の声を聴いて、今なすことを自分で決断して実践していくべきなのです。

失敗する一番の理由は「教わった通りに実践している」ことなのです。

教わったこととは外から取り入れた知識です。その知識は始めるときには重要でした。何も知らない世界、それは真っ暗闇の中に放り出された世界でもあります。そこをいきなり歩けと言われてもとても怖くて最初の一歩が踏み出せません。ですから外から知識を取り入れ、足元に薄明かりを照らします。だから歩き始めることが出来ました。

しかし、一歩を踏み出した後は、その知識は硬盤層に変わっていくのです。自分が畑と向き合い、畑からのメッセージを受け取ろうと思っても、その邪魔をするのです。

 

○作物の声を聴く

畑のメッセージに耳を傾け、今作物が何を求めているかを感じ、今なすべきことに意識を集中させてそれを成し遂げる。これが自然農の基本です。行動にタブーを創らず、自分が感じたことを信じて、柔軟に対応していきます。自然農とはどこかに書かれた自然農法を実践することではなく、農と自然体で向き合うことです。

 

では作物の声はどうやって聴くのでしょう。作物を観察していると、葉っぱが萎れている・色が少し変・虫に食われている・成長が遅い などいろんな情報が得られます。おなかがすいていると言われたら、ご飯をあげるべきなのです。今何をするべきかは、外のマニュアルに求めるのではなく、その答えは自分の中(中真)から引き出さなければならなりません。「○○してはいけない」というタブーがあると、答えにふたをしてしまって、本当の答えを引き出せません。

自然界は、すべてをバランスが整った方向に導こうとします。その答えはすでにあります。そして中真はそれを知っています。すべての答えは自分の内(中真)にあります。しかしその答えに気づくのを邪魔しているのが「思考」です。

 

ちなみに、この時自分が出した答えが間違っているかもしれないという不安に襲われることがあります。農業の場合、それが正しかったかどうかはいずれ答えが出ます。しかし、答えが出るのに時間がかかる場合もあります。

そんなときは、今できることを行動に移して、心の内の感情の揺らぎを観察します。今なすべきことをやりきっても、まだ心にモヤモヤを感じるなら、まだ何かやるべきことが残っています。そして心がスッキリとした感覚になったら、できることはやりきったというサインです。

しかしそれは、結果を保証するものではありません。特に農業は災害等で一夜にしてすべてを失うようなことも起こります。でもなすべきことをしていたのなら、それも仕方ないと受け流せる強さが身につくのです。

今なすべきことをやりきるというのは、その結果がどのようになってもすべてを受け入れる強い自分を育てることです。

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