農哲副読本 農から学ぶ「私」の見つけ方(4)
2.二つの世界
美味しさを感じるとき、脳によって感じる美味しさと身体(細胞)が感じる美味しさの2つがあるとご理解ください。
もう少し大げさに言うならば、私たちは脳によって創りだされた世界と、それとは異なる世界の2つの世界に同時に生きています。
「わたし」という感覚は、唯一のもののように感じますが、「別のわたし」がその裏に隠れています。そしてこの両者は、どちらが正しいという問題ではなく、両者とバランスよく付き合っていくことが重要なのですが、問題は、多くの人が「別のわたし」の存在を見失い、その結果としてバランスを崩しています。
農哲の法則には、バランスが崩れるとそれを取り戻すための力が働くというのがあります。私たちは人生において、崩れたバランスを取り戻そうという力が常に働いて、それが様々な試練となって現れ苦しみます。しかしバランスを取り戻せば、その試練は消えていきます。
○脳が創り出す世界:独自の世界
バランスを取り戻すには、二つの世界の存在を認識し、両者の違いを理解することが大切です。
まずは、私たちのだれもが認識しているこの世界の正体を探りましょう。
私たちが存在するこの世界は唯一の世界のように感じます。そしてすべての人には同じ世界が見えているようにも感じます。確かに海や山、月や虫など私たちに見えている景色は同じです。しかしその同じ景色に、ひとりひとりが思考というオブラートを重ね、その人独自の世界を作り上げています。これが「脳によって感じる美味しさ」の世界です。
人類が長い時間をかけて創り上げてきたこの社会は、思考(脳)によって創られました。自然界では見られない特異な現象です。そして新たに生まれた生命は、この社会で生きていくことを強制されます。
生きていくために必死で外から情報を取り入れます。そして、この社会で生きていくために必要なルール(社会性)を身に付けたり、周りの人々と共に生きていくための協調性や柔軟性を身に付けます。
私たちは絶えず新たな情報を取り入れていかなければなりません。それは必要なことですが、問題はそのあとです。その情報の役目が終わったら手放せばよいのですが、その多くは私たちの「内」にゴミとしてとどまってしまいます。そしてその積み重ねによって「独自の世界」が私たちの中に創られます。
私たちが生きていくうえで遭遇する様々な課題(悩み)は、その多くがこの「独自の世界」によって生み出されているのです。
「独自の世界」はあなたが築き上げた価値観や常識です。あなたの思考によって生み出されたものであり、すべての人に共通するものではありません。あなたの価値観は絶対的なものではなく、あなたが創りだした幻想のようなものです。私たちは同じ世界に生きていると感じていますが、ひとりひとりが固有の世界を創りだし、別の世界を生きています。
そして「独自の世界」を創りだす過程で、様々な思考のクセも創られていきます。ところでこの「独自の世界」は、後から「心の硬盤層」として再登場しますので、覚えておいてくださいね。
○思考のクセ
あなたの内にストックされている情報(ごみ)は、過去のあなたが受け入れたものです。ですからそれを否定する新たな情報は、受け入れることに抵抗します。それは過去の自分を否定することになるからで、自分を守るために否定します。絶えず過去の自分とつながりながら判断してしまう、これが一つ目のクセです。
情報は外から取り入れます。私たちの視線は「外」に向かっています。外と自分に境界線を引き、両者を分離して比較してものごとを判断しようとします。自分と他人を比較して自分の位置づけを認識します。分離して認識するというのが二つ目のクセです。さらには比較によって認識しようとします。すなわち相対的な違いだけに意識が向かい、「同じ」であることを認識するのが苦手です。違いだけを認識するのが三つ目のクセです。これらのクセによってあなたの課題は生まれます。それはあなた自身が生み出すものですが、私たちにとって外の世界がすべてなので、課題の原因や解決するための答えを外に探しに行きます。絶えず外に意識が向かう、これが4つ目のクセです。
思考のクセには
・過去(の自分)にとらわれる
・分離して認識する
・違いだけにフォーカスしてしまう
・外に原因や答えを探しに行く
などがあります。
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