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2019年2月

農哲副読本 農から学ぶ「私」の見つけ方(3)

○味の実験

調査に協力してくれたのは

 ・小学校低学年

 ・その親世代(概ね30代)

 ・その祖父母世代(概ね60代)

で各十数名の人に食べ比べていただきました。そしてその結果は見事に異なりました。

60歳代の人たちはほとんどがAのみかんが美味しいといいました。そして30歳代の親世代はほとんどがBのみかんを選びました。そして小学生低学年の答えは、真っ二つに割れました。半数がAと答え、半数がBと答えたのです。

私は前職で様々な調査にも取り組んできましたが、世代の違いで回答がこんなに異なる調査を経験したことがありません。

さらにその理由も聞いてみました。

60歳代の人たちは「Aのみかんは昔食べたみかんの味だ。今の時代でこの味のみかんを食べられるなんて感動した。嬉しい。」と言ってくれました。そして30歳代の親世代は「Bのみかんは甘いから美味しい」と答えました。そして子供たちですが、Bを選んだ子供たちは親と同じように「甘いから美味しい」と答えました。そしてAを選んだ子供たちは、「美味しいから美味しい」と答えたのです。

「美味しいから美味しい」って素晴らしい回答だと思いませんか。『美味しさに理由なんかないでしょ。ただただ美味しいから美味しいのです。』子供たちにそんな風にしかられたように感じました。そうか、本物の美味しさには理由など不要なのだ。そしてそこにこそ大切な秘密が隠れている。

ちなみに調査に使用したみかんの素性ですが、どちらも品種は同じで、Bは消費者が好むといわれている酸が低くて糖が高い慣行農栽培(農薬を使用した通常の栽培)のみかんで、Aは自然農栽培のみかんです。

 

 

みかんの味については前作(P45~)でも取り上げているので詳しくはそちらを読んでいただくとして、結論のみ述べると、みかんの味は酸と糖の二つだけで作られているのではなく、ビタミンやミネラルといった微量栄養素も含めたバランスによって作られます。「甘いだけ」という言葉がありますが、それはそこに糖はあるがそれ以外の栄養素が失われている味です。そして他の栄養素までしっかりと詰まった本物の美味しさを目指すには、自然農という栽培方法でしかその味を実現できなかったのが、私が自然農栽培に取り組んでいる理由です。

 

○美味しさの秘密

 

「美味しいから美味しい」の秘密を探るために、私たちはどんな時に美味しいと感じるかを考えてみます。

例えば、高級レストランで数万円もするコース料理をいただいているとき、これは絶対に美味しい!と思っているはずです。あるいは1時間以上並んでやっとありつけたラーメンも美味しいと感じるでしょう。おふくろの味やふるさとの味も美味しいですね。さらには過去に美味しいと判定したあの時の味と似ているとか、私たちには美味しさのデータベースが脳の中に構築されていて、舌から受ける刺激とそのデータベースと照合しながら、美味しいかどうかを判定しているように思います。

先の調査結果に戻るなら、60歳代の人々がAを美味しいといったのは、懐かしい記憶とつながって味に付加価値がついたからでしょう。そしてBが美味しいと答えた人たちは、「甘いみかん=美味しい」という脳のデータベースが判定したのではないでしょうか。

では「美味しいから美味しい」という美味しさはどこから来るのでしょうか。

 

私たちは普段から様々なストレスを感じており、そのストレスから身を守るために免疫機能が発動されます。この免疫機能は複数の栄養素のチームプレイによって発揮されますが、その時栄養素が消費されているのです。そして複数の栄養素の一つでも欠けているとその免疫機能は発揮されず、身体がダメージを受けます。

体内に存在する栄養素は絶えず変化し、バランスを崩します。しかし微量栄養素の多くは体内で生産することができず、食事として口から取り入れなければなりません。体内に不足している栄養素を補うために、「無性に○○が食べたくなった」という感覚はだれもが体験しているのではないでしょうか。

すなわち、不足している栄養素を含む栄養バランスが整った食事を口にした時、身体(細胞)は「これが欲しかった!」と喜ぶのです。それが「美味しい」という感情となって表に現れます。

 

しかしこの「美味しい」感覚を日常において感じることは意外と難しいのです。食べ物を口にした時、舌が受け取る刺激(味覚)がまず優先されます。そして脳のデータベースと照合し、その味の評価を下します。Bのみかんは甘いから美味しいと感じたのはこのためです。

しかし、食べ物が口から消えた(舌で感じる美味しさから解放された)時、身体の奥の方から湧き上がってくる感情に気づくことがあります。私の場合、それは暖かい陽だまりにいるような、やさしい甘さに包まれたとても幸せな感覚でした。これこそが本当の美味しさであり、身体からのアリガトウのメッセージであると感じます。 (以下、続く)

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農哲副読本 農から学ぶ「私」の見つけ方(2)

「どうして自分だけがこんなにつらい思いをしなければならないのか。」

「私は何の役にも立たない、この世界で必要とされていないちっぽけな存在だ。」

「私は何をすればいいのでしょう。もっと人の役に立ちたいのに、自分に何ができるのかわからない。」

だれもがこのような悩みを持った経験があると思います。そして、今も大きな不安や悩みを抱えて生きているひとも大勢いると思います。

そんなあなたに前作で語ってきたシンプルな法則(以下「農哲」と呼ぶ。)は本当に役に立つのでしょうか。いえ、役に立てないなら農哲は本物とは言えません。本冊子では、農哲のエッセンスを紐解きながら、あなたが持つ悩みを解消し、あなた自身が新たな自分を発見し、人生そのものがワクワクに満ちた素敵なものに変わるのをお手伝いしたいと思います。

 

いきなり大風呂敷を広げてみました~。たかだか一冊の本を読んだところで、人の人生を変えることなど簡単ではありません。そんな悩みならとっくに解決しているし、そして変えるのはあなた自身ですから、本がそれを保証するわけでもありません。

しかし、苦しみの渦中にいる人は「ワラにもすがる思い」で必死に自分を救ってくれる情報を探します。私自身そんなつらい時期を経験しています。

しかし結論を先に言うと、そんな答えはどこを探しても絶対に見つからないのです。答えは自分の中から引っ張り出さないといけないのです。

本冊子には、皆さんの悩みの答えが書かれているわけではありません。自分でその答えを見つけるためのヒントが書かれています。それは新たな自分を発見する道でもあります。

そして新たな自分は、「オートマティックに生きる」という不思議で魅力的な人生を歩み始めます。

自分を変えるなんて簡単にできるわけがない!そう思っているあなたも気楽な気持ちで読み始めてください。小さな気づきが、あなたの知らない心の扉を開いてくれるかもしれませんよ。

 

1.みかんの味の話

 

○美味しい

本題に入る前にみかんの話をします。

私がみかん栽培を始めた時、最初から自然農を目指したのではなく、ひたすら「美味しいみかん」を作りたいと思いました。もちろん、前職では環境問題のコンサルタントなどしていましたから自然農への関心もありました。しかしみかんはしょせん嗜好品です。いくら安全なみかんだと訴えても、美味しくなければ誰も振り向いてくれません。すべてのお客様にリピーターになってもらうためには、美味しさで勝負するしかないのです。

 

次に問題となったのは、美味しいみかんとは一体どんな味のみかんなのかということです。

一般にみかんの味は、酸と糖の二つの要素で決まり、酸を低くして糖を上げれば甘くておいしいみかんだといわれます。そして消費者はそういうみかんを好むから、甘いみかんを作りなさいと指導されます。

でも私は、そういう甘いみかんを食べても美味しいとは思えませんでした。であれば自分で調べるしかないと思い、AB2種類のみかんをあるイベント会場に持ち込み食べ比べをしてもらいました。

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農哲副読本 農から学ぶ「私」の見つけ方(1)

皆様大変ご無沙汰しております。

「農から学ぶ哲学」という本の原稿を書き上げた時、すべてを出し尽くしたという脱力感に襲われ、その後、全く文章が書けなくなり、2年が過ぎてしまいました。

ところが今年、新しい年となって、いきなり本の続きを書きたいという気持ちがわきあがり、約1か月で一気に新しい文章を書き上げました。それが、

農哲副読本

 農から学ぶ「私」の見つけ方 オートマティックに生きる

です。

ただし、文章量がまだ少なく、今のままでは1冊の本としての出版ができないので、まずは小冊子として印刷・製本することとしました。この小冊子はこの3月中旬に仕上がります。

この小冊子は書店等では手に入れることができないので、このブログを再開し、ここに原稿をアップしていきます。また直接会う機会のある皆様とは、小冊子完成し次第、配布始めます。

今後、皆様の感想等を聞かせていただきながら、内容をさらに充実させ、次作の出版につなげたいと思っています。感想・質問なんでも結構ですので、メッセージいただければ幸いです。

 メールタイトル 農哲副読本 感想・質問

 メールアドレス ken3_musubi@nifty.co

できる限りお返事書かせていただきます。

農哲副読本構成

はじめに

本編:オートマティックに生きる

1.みかんの味の話

2.二つの世界

3.中真とつながる

4.あるがままの自分

5.事例で考える

6.知識と知恵

7.今生で何を目指すか

付録 農哲で取り上げたシンプルな法則(概要)

おわりに

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はじめに

農業(自然)と日々向き合っていると、そこで起こる様々な現象には、いくつかのシンプルな法則が貫かれていることに気づきます。そしてその法則は、微生物などのミクロの世界から、宇宙といったマクロな世界まで貫かれています。さらには、人間の身体や人生、そして人間が生み出したこの社会の隅々にまで貫かれています。

ですから、そのシンプルな法則を理解すれば、私たちの生き方や社会のあるべき姿までが見えてきます。

私たちは、前作『農から学ぶ哲学 宇宙・自然・人 すべては命の原点で繋がっていた』(森賢三 森光司著、文芸社)において、そのシンプルな法則を紹介し、それを様々な分野で活用していただきたいと思いました。

前作では農業を取り上げてはいますが、決して農業の本ではなく、この本を読んでくれたすべての人が、自分の人生をより充実したものへと変えていくためのテキストとして有効に活用していただきたいと願いました。

おかげさまで前作は多くの人の手に渡り、高い評価もいただきました。しかしながら、本の内容を自分の人生に落とし込み、自分の人生をより実りあるものへと変えていくことに貢献できたかというと、それは十分ではありませんでした。

必要な素材は前作で提示しました。しかし、その素材を自力で加工し調理していくには、あまりにも課題が大きすぎたからです。前作出版後、多くの場所でお話し会を開かせていただきました。その中でシンプルな法則を活用するための補足説明などをさせていただくと、本では記述していない内容がまだまだたくさんあることに気づきました。

 

本冊子では、前作を読み解き、読者ひとりひとりの人生をさらに充実したものにしていくための一つの道筋を示します。

 

本冊子は前作を読んでいただいた人を対象に書かれていますが、その内容は前作を読んでいなくても十分理解できる内容となっています。むしろ、本冊子を先に読んでいただき、あとからその元となっている前作を読んでいただく方がより理解できるかもしれません。

 

前作同様、多くの皆様に可愛がっていただけることを心より願っています。

 

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