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むすび通信134号(農哲3:乳酸菌栽培②)

2015.8.19発信)

 

○散布

 

仕込んだ溶液は100倍程度に希釈し、動力噴霧機を使って散布します。葉っぱにたっぷりかかるように散布し、樹木であれば月1回以上、野菜であれば月2回以上の散布が望ましいです。

散布のタイミングは満月か新月に行います。この時期は、虫の産卵活動が活発になりますが、産卵した直後の卵や生まれたばかりの青虫などは、溶液がかかるとミイラ化します。

仕込んだ溶液は、発酵によって強い酸性(PH3.5以上)となっており、希釈しても酸性が保たれるので、その酸の効果によるのか、あるいは卵等に菌が付着することでダメージを与えるのか、詳しくはわかりません。

しかし、溶液自身は殺虫剤ではないので、成虫には効かないし、青虫も成長すると効果はありません。あくまでも散布の時期が適切だと、防除効果がみられるという程度です。

ですから、満月か新月が望ましいという程度であって、作業できるタイミングで散布します。

 

○効果

 

本来の効果は3つあります。

 

効果1:病気を防ぐ

病気の原因の一つとして、病原菌の増殖(暴走)があります。何故増殖したかが問題ですが、畑で生じる病気も同じです。

溶液には殺菌効果がないので、病原菌を消すことはできません。しかし、多様で大量の善玉菌が葉っぱの表面に付着することによって、拮抗作用によって病原菌の活動を押さえることができます。多様な菌の存在は、一部の菌の暴走を押さえます。

しかし、葉っぱの表面に付着した菌は、雨によって流されるので、定期的な散布が必要です。

 

効果2:免疫効果を高める

免疫効果は、複数の善玉菌や複数の栄養素のチームプレイによって発揮されます。

散布した溶液に含まれる菌や栄養素は、葉っぱから作物内に取り込まれます。根っこから吸収するのが本来の姿ですが、葉っぱからの吸収は人間が点滴によって栄養素を体内に取り込むのと同じです。このことによって作物自身の免疫力が向上し、自分の身は自分で守れるようになります。健康な作物は虫も食べません。

 

効果3:土を育てる

 

葉っぱに散布した溶液の大半は、雫となって土に落ちます。土に落ちた微生物は、土中の発酵を活性化させます。そして土の発酵が十分進むと、根っこから栄養素や菌の吸収が常に行われるようになり、作物はさらに健康になってゆきます。

 

○他の農業資材

 

乳酸菌溶液は、「作物や土を健康にする」ことを目的として使用するものです。しかし、外的要因は絶えず変化するし、慣行農から自然農へと転換中の畑は様々な問題も出てくるため、乳酸菌溶液では防げない現象も多々生まれてきます。乳酸菌溶液以外に活用している農業資材をいくつかご紹介します。

 

●木酢液

木酢液は炭を作るプロセスで抽出できます。木酢液を500倍以上の高濃度で散布すると殺菌効果があります。既に病気が発生している場合は、集中的に木酢散布で防ぎます。また、虫の活動を抑える効果もあり、既に木酢が散布されている園地を虫が避ける効果もあるようです。シーズンの始まりなど、年に1回以上の散布がお勧めですが、木酢液には殺菌効果があるため、乳酸菌溶液と混ぜて一緒に散布することはできません。

また、1000倍より薄い濃度で散布すると、栄養素としての効果があります。

 

●梅酢など

葉物野菜等が病気になった時、カルシウムなどのミネラルを与えることが有効な場合があります。その場合、梅酢や柿酢といった酸度の高い溶液に牡蠣殻(貝殻)を十分溶かせて、その溶液を散布すると有効です。カルシウムを溶かし込んだ梅酢と乳酸菌溶液をブレンドして散布すると、さらに相乗効果が期待できます。

木酢液も酸性なので、これに牡蠣殻を溶かして散布することもお勧めです。

 

●光合成細菌

慣行農から転換途中の農地など、園地に不純物が多数残存している場合、乳酸菌溶液の投入で時間をかけて取り除くことは可能ですが、既に2章で登場した光合成細菌を投入するのが最も効果的です。

光合成細菌は田や沼などに生息していますが、それを抽出するのは簡単ではありません。しかし、いったん抽出すると、透明な容器に水道水(中性の水であることが重要)とエサ(鰹節など)を加えて日当たりのよい場所に置けば、簡単に増やすことができます。誰かから種菌をもらい自分で増やすのが現実的です。

光合成細菌は水中で生息するので、雨の前か雨が降っているときに散布するのが有効です。

 

●えひめAI

乳酸菌溶液を自分で作るのが面倒だという人には、スーパーで調達できる菌を増やして同様の効果を持つ溶液を作ることができます。ヨーグルトとドライイースト、納豆を使用しますが、専門の本も出版されていますので、関心のある人は調べてみてください。

 

身の回りの素材を使って、あるいは自分たちで道具などを開発して農業資材を準備し、畑に投入していくのを理想としています。しかし、一人ですべてを準備するのは大変です。複数の農家さんが協力し、お互いの農業資材を提供しあうとか、流通している農業資材を活用するなど、柔軟に対応していただきたいと思います。

 

(「乳酸菌栽培」、終わり)

 

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むすび通信1100号のURLです。

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